ベルツァーのちょっと変わったラチェットハンドル
ベルツァーのラチェットハンドルは左右の切り替えが手元で出来るという特許(US PAT.5230262)を持つ。
以前は1/2sqの60ギアの物しか無かったのだが,今はこのような3/8sqの物も発売されている。ちなみに,
これは俺の理想とするラチェット(小型丸ヘッドで多ギヤ,スピンディスク付でプッシュリリース,切替が容易で
回転方向が一目瞭然な物)にもっとも近い形だ。これと同じ発想のラチェットハンドルがストレートから発売
されているので,てっきり同じパテントかと思いきや,(US PAT.6481316)というパテントで,このベルツァー
とは似て非なる物のようだ。
表側から見たところ。 ギア数は72でプッシュリリースだ。ハンドルはエルゴデザインで握りやすくて力が入る。 この色はBELZERのカラーリングで,BAHCOブランドに変わった物はグレーの部分がオレンジ色の BAHCOカラーに変更になっている。ちなみに,丸形ヘッドだがこのラチェットは内歯構造ではなく, 外歯構造である。どちらかといえばギアレンチ系工具に歯の構造が近い。 |
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裏側から見たところ。 早回し用のスピンディスクは標準装備。ディスクとカバーはプラスチックで質感はイマイチ。 |
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ディスクを外したところ。 ディスクはスナップリングで止まっている。工具の材質はパナジュウムエクストラ。 |
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ヘッド部を完全にバラしたところ。 バラすのには2種類のスナップリングプライヤーが必要だ。 |
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切り替え部の構造。(写真にカーソルを当てるとR⇔Lと切り替わります) 中心を通っているロッドが左右に振れる事によってパウル(受けのギア)が切り替わる。 ロッドはパウルを押さえるバネの役割も担っているのだが,テンションが弱くギア部に グリスを塗りすぎるとギアとパウルが張り付いてしまい,切替が出来なくなるのでご注意を! ちなみに,グリスを塗らない場合や,少なめの塗布ならば全く問題は出ない。 |
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R⇔L切り替え部 この黒い部分を回して切り替える。(写真はR側) やはり,この部分もチャチな感じは否めない。 |
Snap-on/Bahcoの傘下企業になって質が落ちた? との噂のBELZER…。やはりドイツ製ではなかった! 実は,バーコのアルゼンチン工場製。最近,バーコの 実売価格が下がったのはこの辺に理由がありそうだ。 蛇足だが,安いドイツのメーカーはラチェットや ソケットの類に限っては他国製であることが多い。 例を挙げると,LUXやPROXXONは台湾製だし, CAROLUSの一部はダイヤ精工製だ。ちなみに, CAROLUSの特徴であるカンターフレックスハンドルの パテントはダイヤ精工の井上氏が持っている。 |
←英文の取扱説明書クリックすると大きな画像になります。
BELZER(ベルツァー)について
BAHCOグループはブランドの統一を進めたため,BELZERのブランドは消え,全ての製品はBAHCOブランドになった。
本当は2005年にブランドは消える予定だったが,交代が思うように進まず?その後も少しだけBELZERのブランドが
残っていた。しかし,残念だが2008年には1884年創業の老舗ブランドは完全に消えている。最盛期はスナップオンと
仕上げも価格も双璧をなす高級ブランドだったベルツァー。サンドビックに吸収され質が落ち,さらにサンドビックの
ハンドツール部門がスナップオンに売却されるとドイツのベルツァー工場は閉鎖。生産がスペインやアルゼンチンの
バーコ工場で行われるようになるととさらに質は落ちた。(というより,質がバーコの普及品並になったという感じか。)
日本での最後は,輸入元のサンドビックジャパンが在庫を大量放出したので,量販店で驚く程安くワゴンセールの
ように売られてしまったのが残念…!その時買った人はきっとBELZERを安物三流ブランドと思っているんだろうなぁ。