ダメだった輸入工具… (2010年8月18日リンク先他を全面修正!)
圧着工具を比較してみました。一般的に良いとされている?輸入工具も,コレは不得手で,規格の違いで国産端子は国産工具がピッタリでした。

今回検証した国産と輸入の圧着工具7種


左3本は輸入品でBeta(ITALY),AMP(USA),KNIPEX(GERMANY)。
右4本は国産で,IZUMILOBTEXFUJIYA,ヒーロー電機(日立モバイル)の製品。

刃の厚さはこんな感じ。


刃の厚さの比較のために並べてみた。並べている順は左の写真のとおり。
両端のBetaとHEROは別格として,AMP,KNIPEX,IZUMI,LOBTEX,
FUJIYAの5本中ではLOBTEXが一番厚い。



今回,検証に使ったファストン250型オープンバレル端子。
自動車等で多用される一般的な形の端子だ。圧着部の幅は実測で
芯線部分が4.2mmで被覆部分が2.2mm。



これは大型の圧着端子。アーシング等に使われる物。
この端子は肉厚で固く,小型のペンチでは潰せない。圧着部の幅は実測で
芯線部分が4.5mmで被覆部分が3.5mm。


Beta:1605 (ITALY)
圧着部を同時に潰せる構造。一度の圧着で済むが少々コツが要る。
バイスグリップ型で力が入るのだが,ワイヤーストリッパーは使いにくい。
形から推測するとクニペックス9700-215BのOEMと思われる。刃厚は
4.5+4.5の9mm。カッターは先端に付いている。



力が入るので,大型の端子は楽勝で?潰せる。比較的キレイに潰れた。
しかし,ファストン端子は芯線部分がうまく潰れない。形状が合わないようだ。
被覆部分はかろうじて?正規に近い潰れ方をしている。

AMP:SUPER CHANP FT (USA)
超有名な?アメリカのコネクターメーカーのAMP製で,AMPが独立メーカー
だった頃個人輸入した物。圧着部の刃はV形っぽい型。国産のU型形状に
比べると角度がきつい感じ。刃厚は実測で3.2mm。ワイヤカッターは先端に
付いている。ビスカッターは当然インチだ。最近は,ヒーロー電機から
ライセンス生産の日本製も販売されている。なお,現在のAMPはタイコ
エレクトロニクス傘下のブランドになっている。



芯線部分は正規の潰れ方をするが,被覆部分がうまく潰れない。角度が
合わないため,うまく丸まらずに直線的に折り重なって潰れてしまう。コツを
つかめば使えるが,誰が潰してもキレイに出来なければ使い物にはならないと思う。

IZUMI:B125(国産)
当時,日立モバイル(現,日立オートパーツ&サービス)の純正品だった物。
25年以上使っているのですっかり年季が入ってしまった。ハンドルも握り
やすく,整備工場での使用率も高い工具だ。しかし,ワイヤカッターが支点の
内側なのが使いにくい。刃厚は実測で3.1mm。

この工具の製造元の泉精器は2009年8月24日に倒産したが,一年後の
2010年8月,工具事業、家電事業についてWISE PARTNERSと日本政策
投資銀行の支援を受け、新生株式会社泉精器製作所とし再生したようである。しかし,倒産を機に?この工具は日立オートパーツ&サービス純正では
無くなってしまった。



日立モバイル純正品だけあって潰れ方に文句は無い。
誰が使ってもキレイに潰せる工具だ。しかし,端子の幅より
刃厚がだいぶ薄いので,刃の当たった部分だけ凹んだ跡が付く。
半分づつ2回に分けて潰すのがいいだろう。


LOBTEX:FK-1(国産)
今までIZUMIの物が最高!と思っていたら,さらに良さそうなモノを発見。
それがエビのマークで有名なLOBTEXの製品だった。刃先にカッターが付いて
いるし,中間に裸端子用の刃も付いている。刃厚も実測4mmで申し分ない。
唯一気に入らないのはビニールグリップの形で,凸凹は要らないと思う。



刃厚があるため,IZUMIよりもキレイに潰れる。
これで実売\1,500以下で,IZUMIより\1,000は安く買えるのでお買い得。


ヒーロー電機日立オートパーツ&サービス:B-155(国産)
これは参考で,大型のオープンバレル端子用の工具だ。現在は絶版品。
これくらい大型端子になると肉厚もあって硬いので,このような支点の2カ所
ある工具じゃないと潰せない。ビスカッターやワイヤーストリッパーは付いて
いなくて,刃厚は5mm。当時,ヒーロー電機の製品でもこれはIZUMI製ではなかったようだ。



当然キレイに潰せるが,潰す前に端子圧着部分の形を丸く整えないと
キレイに潰せない。これは端子が硬いため仕方がない事か。
線のサイズが端子に合っていないのはご愛敬。(笑
この工具は大きいのでファストン250の端子を潰せないのでご注意!


KNIPEX:9721-215B(GERMANY:ひょっとして国産???)
一応?パッケージにはドイツ製と書いてあった?ような気もするし,ドイツの
メーカーサイトにも載っている商品なのだが,工具自体にはGERMANYの
表示がどこにも無く妙に日本製っぽい?製品。刃厚は実測3.3mmで,
IZUMIの次に薄い。WEB上で国産の工具を調べたらこれにソックリな
FUJIYAの製品を発見!



被覆部分は綺麗に潰せるが芯線部分は片側だけ平べったく潰れた。
まぁ,輸入品?としては及第点というところか。これは日本製端子と
圧着部のサイズが合わないので仕方がないところ。

で,早速?FUJIYA(フジ矢)の物を買ってみた(笑。やっぱりKNIPEXはFUJIYAとソックリ!?


並べてスキャンしたクニペックスとフジ矢の画像である。日本とドイツでは規格が違うので圧着部とストリッパーはサイズこそ
違うが,各配置がまったく同じで,パッと見は明らかに同製品。カタログを比べると全長はフジ矢の方が10mm長いのだが…。
まさか,フジ矢がクニペックスのOEM品って事は無いよなぁ?もしかしてどちらかのメーカーがパクっているのか???
俺個人的には,この製品は間違いなくフジ矢製のOEM品?だと推測している…!


FUJIYA(国産):FA003
これが噂の?クニペックスのそっくりさん(笑 表示及び圧着部と
ストリッパーのサイズを除けば厚さは実測3.3mmだし,殆どが
クニペックスと同じである。ちなみに,価格はクニペックスの約半額。



圧着部は日本サイズで作られているためきれいに潰れた。芯線部を潰す
刃厚が足りない気もするが半分づつ2回に分けて潰せば問題無い。この
刃厚の工具では痕が残るので一度で潰す方法はやめた方がいい。

圧着部は販売(生産)国によって規格が違う!



端子サイズは使用する電線のサイズ(電線断面積:単位はmm2)を示しており,国産はJIS規格準拠の1.25,2.0,5.5。ドイツはISO表示(IEC/EN規格:国産と同じく単位はmm2)で1.5,2.5と6(非表示)。アメリカはAWG(American Wire Gauge)の色分けの表示のみ(赤がAWG20〜18,黄色が24〜22)。イタリアはISOとAWGの併記となっている。

ワイヤーストリップ部も販売生産)国によって規格が違う!


ワイヤーストリッパーの電線のサイズも同様で,国産(JIS規格準拠),ISO表示(IEC/EN規格),AWG(American Wire Gauge)ではすべてサイズが違う。AMPはメトリック表示が無くAWG表示のみなので(表面の表示はスタッドサイズの図であり,ワイヤーストリッパーとは関係ない)特別に自動車用ではないアメリカ製ミルバーの物も比較対象に入れてみたが,アメリカ製のメトリック表示はJISともISOとも違う表示になっている。これはAWGを無理矢理?メトリック換算したためだと思われる。ちなみに,AWGのサイズは次表のとおり。

AWGサイズ 24 22 20 18 16 14 12 10 8 6 4 2 1 0
等価断面積(mm2 0.21 0.32 0.52 0.82 1.3 2.1 3.3 5.3 8.4 13.3 21.2 33.6 42.4 53.5
参考資料:AWG(American Wire Gauge)と等価断面積対比表

まとめ。
手持ちの圧着工具を比べてみたが,やはり国産の端子には国産の工具が一番でした。これは,ビスとドライバーの関係よりシビアな条件です。昔,調子に乗って?「外国製の方が良いだろう。」と,個人輸入で実物も見ないで外国から買ったが,失敗だったと思う。確かに,工具自体の質とかは国産より上だが,端子のサイズが合わなければ何の意味もなかった…。日本国内の場合でも連鎖型圧着端子はJIS化されていないので各端子メーカにより寸法が異なるし,外国製は電線の規格が違うためワイヤーストリッパーの穴の大きさが合わず被覆が綺麗に剥けないのです。無知な?工具店員や友人がKNIPEXを薦めてきたら,どう答えてくれるのか?その点を突っ込んでみるのも面白いかもしれませんね。(笑

制御盤を組んでいる人(盤屋さん)の話によれば,制御盤のプロの場合は,AMPの端子はAMPの工具で潰すのが普通だそうで,たとえ同サイズの工具があったとしても他メーカーの工具は使わないそうですから,端子と圧着ペンチが別会社で端子がキレイにつぶれないのは仕方がない事だそうです。自動車用の場合そこまでシビアではないが,なるほどと思いました。やはりこれもビスとドライバーと同じで,我々はメーカーの想定外の端子を使って合う合わないと騒いでいるだけなのかも…。しかし,今回の場合は端子を店に持って行って,実際に潰して見る訳にはいかないからなぁ

ちなみに,圧着工具を選ぶポイントとしてこれだけは押さえておきたいのは,圧着部が支点の外側にある物を選ぶ。(今回検証した物は全て圧着部がは支点の外側に付いているが…)これは,内側にあると力が入らないし狭い場所で潰しにくい。そして,ワイヤーカッターも支点の外側にある物を選ぶ(今回検証した物の中ではBeta,AMP,LOBTEXがそうなっている)これも同様の理由で,内側にあると狭い場所で切りにくいし,力が入らない。あと,刃厚が端子幅に近いほど良い。(LOBTEXが4oでこれに近い)これは幅が違うと食い込んだ跡が残るし,刃が厚い方がキレイに潰しやすい。そう考えると,今現在ベストに近いのはやはり,LOBTEXのFK-1だろう。価格も,どこの店で買ってもIZUMIより\1,000は安いと思われる。ただし,握りの凹凸は好みが分かれるだろうし,新品のうちは開閉が渋いのはイマイチ。俺としてはLOBTEXから裸端子圧着部を廃止して全長を短くして,握りをIZUMIの形にしたら最高だと思うのだが。(注:ワイヤーカッターはすべて銅線専用で,鉄線や鋼線は切る事は出来ません。)

ちなみに,これらの工具を「電工用圧着ペンチ」というのは間違いで「自動車用圧着工具」または単に「圧着工具」が正解。電工用と言うと,リングスリーブ等を潰す本当の電気工事用を指してしまいます。また,ヨーロッパ車とかに多く使われる絶縁被覆端子用工具も,圧着部の形状が違う別物ですからご注意を。(LOBTEXではFK-2がそれです。)関連記事:「整備工具はじめの一歩(その2)」

蛇足ですが…

圧着工具の性能とは別だが,LOBTEXのFK-1のビスカッターはイマイチでした。最初からネジ山が潰れている感じ(ペイントが入り込んでいた?)で,差し込んだビスのネジ山をナメてしまった。とりあえずタップでFK-1のネジ山を浚って解決し,普通に使えるようになったが改善の余地はあると思う。個体差なのかもしれないが…。


インデックスに戻る

inserted by FC2 system