ボールポイント付スタビーHEXレンチ(6mm)を比べてみました。

メーカーで一番最初に発売したのは国産のMITOLOYで,その次がTONEだったと思う。最近のバイクや車は機器類が入り組んでいるから,こんな工具が必要になってくる…。
名称は各社まちまちで,TONEが首下ショート,BONDHUSとMITOLOYがスタビー,PBはショートヘッドと表記している。
このページは,メーカー毎に写真を並べるために横長になってしまい,ディスプレイによっては見にくいかも。お許しを!



これは,ベスパPX200FL2ののフロントサス回りである。
最新型のベスパは殆どの箇所にHEXのキャップボルトを多用
しており,このように普通のレンチでは入らない箇所がある…!



ところが!サス交換等,従来のLレンチで回せない場所も
スタビーLレンチならこのとおり余裕で回せます。
車載工具のLレンチも即,スタビーHEXに入れ替えました。


スタビーHEX各種
という訳で,必要に迫られて買って,いつの間にか?6種類。
一番上はBONDHUSのスタンダード品で,これが従来の形。
その下に向かってBONDHUSのスタビー,TONEMITOLOY
PBASAHIダックスレンチ,旧型WISE反復30°レンチである。



PB:2212L(SWISS)
PB製スタビーLレンチの発売を待っていた人も多いはず。2005年
12月にやっと発売されました。メッキはサテン仕上げでここに紹介
している4社中で一番きれい。 カタログでの内側首長は13mmで
外側を実測すると18.6mmだ。PBだけベント角(曲げ角度)が100度
で作られており,回し易さも考慮されている。(パテントかも?)



ここに載せたメーカーの以外を含めても,PBだけが唯一
ボールの先を削っておらず先が尖っている。まるで宝珠の
ような?形をしていて,えぐれの部分は大きい。ちなみに,
PBの場合サイズ表示はレーザー印字のみで使い込むと
薄く消えて無くなりそう。



カタログによれば30度傾けて回せるということだが,ボールの
部分が丸に近い形状なので傾けられる角度はさらに大きい。しかし,
トルクが掛けられるかというと,ボールが丸いので角度をきつくして
回すと空転してHEX穴をナメる確率は一番高いし,ボール部の
メッキも剥がれやすい。



BONDHUS:16768(USA)
PBから発売される迄,欧米製では唯一だった?スタビーLレンチ。
カタログでの内側首長は0.47in。(11.9mm)で外側実測16.8mmだ。
角の面取りはあまりキレイではない。
メッキされていない16568というモデルもある。




BONDHUS:16768のボールポイント部分。形はスタンダード品と同じだ。
この潰れたようなボールポイント形状は1981年にUSパテントを取得して
モデルチェンジしてからの形。それ以前は他メーカーと同様に丸型だった。




BONDHUS:16768のボールポイント差し込み最大角度はこのとおり。
カタログではトルクを掛けられる角度が25度となっているが,
単に軽く回すだけなら国産2社よりも大きな角度で回せる。
それがBONDHUSがパテントを持つボール形状の特徴だ。



TONE:BL-06S(日本製)
メッキはサテンでTONEの仕上げは比較的キレイだ。面取りも良い。
カタログでの内側首長は13mmで,外側実測は19.6mmだ。
工具店の話によればエイト製かも?との事。



TONE:BL-06Sのボールポイント部分。
BONDHUSに比べるとえぐれが大きいが,
回せる角度が大きい訳ではない。




TONE:BL-06Sボールポイント差し込み最大角度はこのとおりで,
カタログには最大傾斜角の表記は無いが,下のMITOLOYと殆ど同じ感じ。
ボールが丸いので角度をきつくして回すと空転してHEX穴をナメる。



MITOLOY:HBL60S(日本製)
これが今回検証の3本の中で一番首が短い。
カタログでの首長は15.5mm?と思ったらミトロイだけ外側寸法
をデーターに載せている。外側実測は14.3mmだ。メッキは光って
いてキレイだが,面にヤスリ目が残る。ちなみに,水戸工機は
短首Lレンチの製造方法で特許を取得(特許公開2003-
251571)している。




MITOLOY:HBL60Sのボールポイント部分。
BONDHUSとTONEの中間のような形だ。
L型HEXレンチをMITOLOYではホローセットレンチと呼ぶ。
MITOLOYは自社生産という事だが,某工具店の話では
WISE(若穂囲製作所)のOEMとの噂も?とのことだが,
製造法特許を取得していることからもその可能性は低い?



MITOLOY:HBL60Sボールポイント差し込み最大角度はこのとおり。
カタログでは最大傾斜角30度となっている。他メーカーは刻印のみだが,
刻印に加えてMITOLOYはメーカー名とサイズも印刷している。

ボール付スタビーHEXレンチ比較のまとめ。

今回の輸入工具VS国産工具はPBを除くと引き分けか…?MITOLOYの品質がちょっと優勢かも…。
価格の高いPBはやっぱり別格で,含めると一人勝ち???。

PB以外の3本は価格が殆ど同じなので,アメリカ製として考えるとBONDHUSが一番お得。メッキではないタイプにすれば一番安い。
首下の短さで選ぶならMITOLOYだが,販路が少なく入手しにくいのが難。入手のしやすさではホームセンター系に販路を持つ
TONEだが,可もなく不可もなく?といった感じでイマイチしっくりこないところが残念。また,TONEやMITOLOYのボールポイント
では角度が足りず,上記の写真にあるベスパのHEXは回せませんでしたが,BONDHUSなら回せた事を付け加えておきます。
また,価格が高いため(定価10,185円で実売8,500円程度)同一レベルでは比べられないがPBのクオリティは高い。

蛇足ですが,背景色が各メーカーのレンチホルダー色だと気が付いた人は十分に工具オタクです。(笑

注:最近のPB製ホルダーは青色ではなくなっています。

首の部分を並べてみた
左からASAHI,WISE(旧型),PB,MITOLOY,TONE,BONDHUS
である。トネ(外側実測19.6mm)が一番長く,ミトロイ(外側実測
14.3mm)が一番短い。


(WISEからもスティックボールレンチという上記4社と同様のスタビーHEXレンチも発売しています。)


その他のスタビーHEX

DACHS WRENCH
(ダックスレンチ)

ASAHI(新日本ツール)の製品。
このレンチは両端が曲がっていて,一方が「辺」に対して90度,もう片方が「角」に対して90度曲がっている。回す時に差し替えて使えば結果的に12角レンチになるため30度強のスペースがあれば使える。サイズ毎に色分けの帯が印刷されていて分かりやすいようになっている。
6mmサイズの外側実測17.4mm

ちなみに,現行製品はDYダックスキーという名称になり,サイズ毎の色分けは廃止された。さらに,DZダックスキーという全長が短いタイプも追加発売されている。

旧型30°REPEAT WRENCH 
(反復30°レンチ)

WISE(若穂囲製作所) の製品。
これは,一見何の変哲もないオフセットHEXレンチだが,ボールポイント側に特徴がある。内側首長はHEX側が11mmでボール側33mmだ。製造上の理由もあるかもしれないがボール側も短首にしてもらわないと隙間の狭い場所では30°の送りで回せないのが残念。改善求む!
左がHEX側で右がボール側である。
ボール側をよく見て見ると…。ボールが30°の角度を変えて削ってある!強度的に変わらないのかは不明だが,30°ずつ回せるのはココに工夫があった
訳だ。真ん中にポチッと出っ張りが残っているのがイマイチ気に入らない。
ちなみに,短首側の外側実測17mm
新型30°リピートレンチ
上で「ボール側も短首に」と,勝手な改善要望を書いた訳だが,なんと!知らないうちに
マイナーチェンジ?をしていた。
このページの要望が反映された訳でもなかろうが,ちゃんとボール側も短首になっている…!これは新規開店のホームセンターで購入した物なので間違いなく最新製品だろう。しかし,残念な事にHEXレンチ側が少しだけ長くなってしまった。
 旧型と新型の比較画像
上が旧型で下が新型だがボールポイント側の長さはこんなにも違う。
旧型の外側実測は39mmに対し新型は26.3mmで12.7mm短くなった。しかし,残念なのはHEX側。新型は21.3mmになってしまい5.3mmも長くなってしまったのが残念の極みである。
そしてさらに,「真ん中にポチッが気に入らない」という勝手な要望も改善されて?いた
…。(画像右側)
PIERCE BALL WRENCH  
(ピアスボール打撃型レンチ)

WISE(若穂囲製作所)の特許製品。
Lレンチではないが,スタビーLレンチと同様に使える。ヘッドを裏表交互に使うとこのレンチも反復30°で締め付けを行うことが出来る。また,打撃を加えられるので固く締まったHEXボルトの緩めにも有効な製品だ。
ビット部反対側を含む外側実測21.1mm
スリムオフセットヘックスレンチ
ANEX(兼古製作所)の製品であるが,残念ながらこの製品はサイズが5mm迄しか無い。鉄板に同社の最短ビットを取り付けたような感じで,大きなトルクは掛けられないからだろう。5mmのレンチで外側実測は10mm。


5mm同士の比較
左:ミトロイ(外側実測12.2mm),右:ANEX
薄型Wヘックスレンチ
ストレートからも上記スリムオフセットヘックスレンチの類似品が発売されていた。



Wヘックスレンチの名のとおり,ANEXとは違って2サイズの組み合わせ。
他にPH2のドライバーと6oHEXの組み合わせの19-4900という製品もある。


外側実測は驚異の?9.8mmである!
(カタログデーターでは10mmと表記されている)


台湾やチャイナのパクリ品か?と思いきや,ちゃんとした?日本製。こちらの方は6oまでラインナップされている。


6mm同士の比較
左:ミトロイ(外側実測14.3mm),右:ストレート


HEX挿入部の比較(5mm)
下がANEXだがビットの固定方法が違うのでWヘックスレンチはANEX製ではないようだ。あくまで推測だが,ストレートのOEMを多く手がける新亀製作所(サンフラッッグ)製かもしれない。

ミニリバースギヤラチェット
(リンク先はこのレンチの考案者であるBobby Hu 氏の会社,HI-FIVE PRODUCTS DEVELOPING CO)





これはプロオート(スエカゲツール)がOEM供給を受け発売している物に,ANEXから発売されている超ショートHEXビットを組み合わせた物だ。

1/4ラチェットビットホルダと同じく1/4のビットホルダーが組み合わさった工具。ラチェット部分はもちろん本締め可能だが,強く締めたり緩める時には,反対側の固定ビットホルダーを使用する。さすがにこの小ささでは72歯で作れなかったようで,ギア数は48で7.5°の振り角となっている。

頭が大きいのは仕方のない事だが,この短さは特筆モノ。何と!外側実測は19mm!TONE(実測19.6mm)よりも低い。(左の写真ではASAHI:17.4mmやPB:16.8mmよりも低く見えるが実際はこれより高い。)しかし,この大きさでラチェット機構なのが凄いと思う。この工具を手に入れてからはすっかり他のスタビーHEXの出番が無くなってしまったと言っても過言ではないくらいだ。

付け加えると,このラチェットに普通のビットを組み合わせると,25mm程度の高さになる。手持ちのWera製ビットを組み合わせたら案の定?25mmだった。また,このラチェットに付属されている+のビットを組み合わせた外寸は16mmである。



従来から発売されている亜鉛メッキに着色したカラービットとは違って,カチオン電着塗装?でサイズ毎の色分けがされている。しかし,何故?メーカーによってサイズと色の組み合わせが違うのだろうか?PBとも違うし,WISEやアサヒとも違う。サイズが一目でわかるというのが各社の謳い文句なのだが,これではユーザーは混乱するばかり。抵抗器のカラーコードのように是非,業界で統一してもらいたいものだ。




曲げ角度は独自の95度を採用し平面上のボルトを回す時の空間を確保している。もしかすると100度というのはPBがパテントを取得していて採用できないのかも。とりあえず,並べて比較。上から,PB(100度),レインボール(95度),ボンダス(90度)




ボール側の実際に差し込んで回せる最大の角度。上からボンダス,レインボール,PB。カタログデーターでは,ボンダス25度,レインボール35度,PBは30度なのだが,実際にはそれ以上で回せる。しかし,空転には注意しなければならない訳だが…。

レインボール
日本のベツセルからもついに?スタビーHEXが発売された。


スタビーとはいっても従来品の半分程度の長さで外側実測で23mm。他のメーカーに比べるとイマイチな短さだ。向かって右から,ウルトラボール(従来品),レインボール,PB,アサヒ,ボンダス,ミトロイ。ベツセルの断面形状は従来品からも継承されるウルトラヘックスという独自の面接触形状が採用されている。詳しくは日独ガチンコ一本勝負を参照。



ボール部はウルトラボールという独自の鬼灯(ほおづき)形状だ。カタログによれば傾斜角度は35度以上だという。



レインボールの保証
レインボールはベツセルが自信を持って送り出した製品なのだろう。永久保証で,破損の場合は交換というスナップオンが築き上げた神話並の?保証が付いている。しかも,送料もベツセル持ち!ただし,日本国内のみ適用だ。ということは,この製品は輸出しているのだろうか?



PBのレンチについて補足説明



独自の角度(100度)を採用したPBのレンチ
上が90度のボンダスで下が100度のPB。末端の空間はこんなに違う。
解放された空間ならどちらでも回せるが,平面上にボルトがある場合90度では
首の長さ分の空間しか出来ない。しかし,100度採用のPBは末端にいくほど空間が
大きくなり手が入れやすく回しやすいという訳だ。



(参考)
メッキの剥げたPBのボール部分
今回の2212Lではなく,俺が25年近く
使っている物です。
PBのボール部分は
長年酷使すると?こんな剥がれ方をする。
最近のは改良されているのだろうか?

俺としては,PBに限らずメッキのボール
ポイントはイマイチ信用できない。ボール
ポイント付Lレンチは,やはりメッキレスが
良いと思う。



世界のHEXレンチメーカー
(アイコンをクリックでメーカーページに飛びます。)

 エクリンド(USA):OEM先多数。アメリカ製のフォールドアップタイプのHEXレンチはSnap-onもPROTOもEklind製だ。材質が少し軟らかいが,実は隠れた?一流メーカーかもしれない。
 ボンダス(USA):アメリカを代表するHEXレンチメーカー。トルクを掛けられる独特のボール形状は特許品。最近ではトルクスのボールポイントで特許を取得している。
 アレン(USA):自転車業界ではHEXレンチの事を「アレンキー」と言うが,語源はこのメーカーだ。現在はダナハー傘下のメーカーとなり,他の工具も造っている。品質は工業用といった感じ。
 エイト(日本):国産唯一のHEX専業メーカー。KTCなどOEM供給先は多いので知らないうちにエイト製品を使っている可能性大。ここも隠れた一流メーカーかも。H19年4月に申請が通り楕円マークが創業以来初めて商標登録された。
 アンドリュースマイヤー(ドイツ):15年くらい前は日本でもよく見かけた。今でもクレー商会が細々と?輸入している。Wihaに似た感じのHEXレンチを作っている。
H.J .ファーマン(ドイツ):HAZET,ELORA,LUXなど,ドイツメーカーHEXレンチの大半はここがOEM元らしい。日本には正規輸入元が無いようだ。
 チェスコ(USA):IRWIN(アーウィン)に吸収されたHEX専業メーカー。売れ残りなのか?未だに見かけることがあるのでとりあえず参考に。(リンク先はIRWINのトップページ)

その他のHEXレンチ製造メーカーはドライバーメーカーリンク集を参考に…。
PB,Wera,Wiha,VESSEL,WISEなどがHEXレンチを製造しています。
また,HAZETはHEXソケットの品質に定評あるが,Lレンチの評価情報は殆ど無い。H.J. Fuhrmann(Hafu)のOEM品だろうが高価?なので普及していないと思われる。


参考資料 
BONDHUSのページにはこんな資料があります。
Hex Cross Section Comparison Chart
これを見ると国産のEIGHTが大健闘でBONDHUSの次に強い。少なくともEklindより強い事になる。ということはEIGHTはEklindのOEM品であるSnap-onより…???
しかし,比較広告の場合,嘘は書いていないが真実も書いてないという事を忘れてはいけない。もしかしたらボンダスより強いメーカーを抜いて比較している可能性もあるからだ。

エイトのページにも資料があるが,比較広告が許されない日本ではメーカー名が目隠し…(笑
各社製品の保証・MAXトルク比較
スイスX社はPB,アメリカX社はEklind,国内X社はWISEか???


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