お肌に優しいソケットって…???

工具掲示板では,どこのメーカーが一番傷が付きやすいか?とか,6角と12角ではどちらが優れている?というような事が論争になったりします。そこで,俺の手持ちのソケットの中から現行で入手可能な物を中心に検証してみました。俺自身も興味があるので,今後も12mmソケットを購入して検証する事も検討中。しかし,この検証は一回につき数十円のボルト代の資金が必要になるのが難???買ったソケットは使えるけど,千切れたボルトは全く使い道が無いからなぁ…!(笑
ちなみに,このページは「各メーカーの面接触理論を目で見て確認しましょう。」というページなので,ここでは敢えて優劣の判定はしていません。結果についての判断は各自で!購入時の参考になれば幸いです。
(注:ボルトの接触痕は六面の中で一番ハッキリ出ている面を撮影しています。)


テスト方法
万力に12mm頭の黒染めボルトを挟み,トルクレンチで20Nmの力を10秒掛けます。
その後,ボルトの頭がねじ切れる迄回します。(概ね30Nm弱でねじ切れました。)
その時の黒染めボルトの傷の付き方を比較してみました。

参考:点接触の6ポイント
HAZET 880(点接触の旧型)
精度が良いと評判の?旧型ハゼット。しかし,点接触ゆえ角を中心に接触痕が付く


参考:点接触の12ポイント
BELZER 7400DM(点接触の旧型)
ドイツ製時代の旧型ベルツァー。点接触なので角の部分とすぐ横に接触痕が付く。


参考:元祖面接触のLOC-RITE
BONNEY MT12
ついに!手に入れたロックライトドライブのボニー製12mmソケットMT12。元祖面接触は角の横1mmくらいの位置に線状の接触痕が付く。実は,このロックライトはスナップオンのフランクドライブより古い面接触ドライブなのだ。
(詳細はページの一番下で!)



Snap-on FM12
面接触のパイオニア?であるフランクドライブ。角の横0.5mm位の場所にケガキ線のような接触痕が付く。



初期型アメリカ製 KOBALT 03212
角の横1mm位の場所にケガキ線のような接触痕が付く。スナップオン傘下メーカーであるJ.H.Willams製初期型コバルトはスナップオンと同工場で作られていて,イヤーマークが刻印されている。しかし,J.H.Willamsがコバルトの生産をしていたのはは2002年迄で,その後のコバルトはダナハーツールグループ(現APEXツールグループ)が生産をしている。しかし2011年から生産はアメリカからアジアに移ってしまい,現在,アメリカ製は存在しないようです。



ACESA 7101
角の横1mmくらいの場所に薄く細い線が入る。比較的目立たない接触痕だ。このアセサはスナップオン傘下のスペインメーカーで,だいぶ前だが,日本ではスナップオンユーロツールという名で売られたこともある。スナップオンジャパンはこのメーカーの販売を止めたらしく,つい最近量販店で投げ売り?された。形状はKo-kenに酷似だがko-ken製ではないだろう。しかし,メーカー名がレーザー印字で明らかにどこかのOEMもしくはOEM向けという風情を醸し出して?いる。仕上げはとても綺麗だ。



J.H.Williams BM-1212
右側の6ポイントよりもやさしく当たっている感じ。角の横1mm位の場所にモヤモヤっとした接触痕。仕上げがとても綺麗なこのソケットもアメリカ製なのだが,イヤーマークは刻印されていない。

スナップオンと同工場製もあることから「ハイエンドインダストリアルツール」と称される事もあるウィリアムズも,最近の製品は台湾や中国製が増えつつあり,アメリカ製品絶滅危惧種?である。



J.H.Williams BMD-612
当然?だが,上記の初期型コバルトと同じ設計かと思われる。角の横1mm位の場所にケガキ線のような接触痕が付く。このウィリアムズも国外不出の工具で,アメリカから直接買えないブランドである。ちなみに,このソケットはアメリカ製なのだが,スナップオンとは違う工場で生産されているようでイヤーマークは刻印されていない。


KLEIN 65912
角の横1mmくらいの位置に線状の接触痕がハッキリと付いた。左下のHEYCOと同じような接触痕だが,こちらの方が痕が鮮明。このクラインは電気工事用工具専門で,日本国内にも正規輸入元があるためドライバーやペンチは電気工事士にもお馴染みのメーカーである。あくまで推測だが,ドライバーやペンチは自社生産かもしれないが,このソケットはOEM品だろう。ラチェットハンドルから推測するとWRIGHTかS・Kあたりの製品かもしれない。



HEYCO 25-6(1/4sq)
角の横1mmくらいの位置に線状の接触痕がハッキリと付いてしまっている。日本には正規の輸入元が存在しないため単品では殆ど輸入されていないハイコーはBMWをはじめとする欧州車の車載工具やプラスチック製品などを作るドイツのメーカーである。日本でいうと,トヨタの車載工具を作るKTCみたいな感じのメーカーかも。



KOBALT 22712(1/4Sq)アメリカ製
これもまたEASCO HAND TOOL製のコバルト。角の横1mm強の位置にハッキリとした細い帯状の接触痕だが食い込んではいない。以前テストしたアームストロング37-012Aと殆ど変わらない感じである。ソケットのプロフィール設計も同じと思われ,傷の付き方も似たり寄ったりだ。メッキの仕上げも殆ど変わらず,アームストロング廉価品=アレン=アメリカ製コバルトと考えて良さそうだ。

注:左のHEYCOとはスキャナーの倍率が違っているため画像が同じ大きさになっていませんが,両方とも間違いなく12mmのソケットです。




KOBALT 22512(1/2Sq)アメリカ製
DANAHER(EASCO HAND TOOL)製のコバルト。角の横2mm位の場所に幅0.5mmくらいの線状接触痕が付く。

注:残念ながら2011年からコバルトの工具は全て台湾や中国製になってしまいました。


S・K8962(インパクトソケット)
1mm幅の完全に食い込んだ線痕。インパクト用なのでこれは仕方ないかもしれない。



S・K43711(1/4Sq)
画像では角の横に白くモヤモヤした痕があるように見えるが,実際には接触痕は殆ど無いといっていい。この,シュアグリップという面接触ドライブはファコムとの提携時に同社のOGVドライブを元に設計されたプロフィールなのかもしれない。もしかしたらOGVと同じ設計か???。明らかに,上記のインパクト用ソケットとは別の設計である。



S・K2312
角の横1mmくらいの場所に線状の接触痕がハッキリと付く。左の43711とは明らかに違う設計。今回テストしたソケットはIDEAL傘下になってからの製品だが,設計が変わったのだろうか?これと同時に43711も含む1/4Sqのソケットセットも輸入したのだが,単独で輸入した左の43711とはS・Kのロゴデザインが違っていた。



ARMSTRONG 37-012A(1/4Sq)
角の横1mm強の位置にハッキリとした線状の接触痕。けっこう目立つ付き方だが食い込んではいない。旧ダナハーツールグループ(現,APEXツールグループ)内では,どちらかと言えば高級ブランド?のアームストロングであるが,下位ブランドであるクラフツマンより接触痕がハッキリと付いてしまっている。



ARMSTRONG 38-112
左の1/4Sqのソケットはハッキリとした接触痕が付いてしまい残念な結果だったが,3/8Sqのこちらは優秀。接触痕は殆ど付かなかった。しかし,クリアランスが大きいのか?下方に押された痕が目視で分からない程度に付く。


WRIGHT 30-12
角の横1mmくらいの位置に線状の接触痕。この,ライトドライブという名称の面接触はパテント(US PAT.5,284,073)を持っている独自の形状だ。日本では殆ど無名なブランドであるアメリカのライトであるが,1927年創業の老舗で過去には有名各社のOEMもしていた実力のあるメーカーだ。日本でもう少し評価されてもいいと思うが,いかんせんラチェットハンドルの設計が古く,自動車用としてはイマイチなのは確か。ソケットやレンチの出来がいいだけに残念!




CRAFTSMAN 44428
角の横2mmくらいの間に帯状の接触痕。食い込んだ痕ではなく,うっすらと押されたような帯状痕で優しい当たり方だ。ちなみに,下部の白い線は反射光だ。



CRAFTSMAN 44303
角の横2mmくらいの間に帯状の薄い接触痕。左の44428と同じセットに入っていた物だが,6角も12角も当たり方は殆ど変わらない感じ。



CRAFTSMAN 42072
角の横1.5mmに線状の接触痕。クラフツマンに限らずダナハーが製造するソケットは設計が2種類あるようで,この接触痕はマトコや現行コバルトと類似。前記のクラフツマン44428と44303やアームストロングとは明らかに違う。ちなみに,このソケットはギアードレンチ用なので,Sq穴は無い。

こんな形のソケットだ。



FACOM SJ12CDX
接触痕はよく見るとほんの少しだけある。しかし,殆ど無いと言い切っていいような感じだ。これはお肌に優しい。ネプロスもそうだったが,12ポイントの方が接触痕が付きにくいようだ。

ちなみに,このソケットはCDXドライブという1/2でも3/8Sqでもない独自の差し込みを使っているが,ソケット側だけは3/8Sqと互換性がある。3/8の大きさで1/2の強度という謳い文句で登場したCDXだが,パテント料の関係なのか他社が追従しなかったため普及には及ばなかったようである。



FACOM J12H
接触痕が付かない?と評判のOGVと呼ばれる面接触ドライブ。左の12ポイントより痕が残るが,確かにうっすらとした接触痕で,帯状に優しく当たっている感じだ。



FACOM J12
左のSJ12CDXやJ12HにはFRANCEの刻印があるが,2011年現在,この製品には刻印が無い。しかし,生産国がどこになろうと接触痕が付かない?と評判のOGVとドライブ。設計は変わっていないようだ。目立つ接触痕は殆ど無いが,うっすらとした痕は付いている。6ポイントより優しく当たっているような感じ。



現行 HAZET 880
角の横1mmくらいの場所に線状接触痕が付く。しかし,食い込んだような痕ではなく,うっすらと押されたような感じだ。ちなみに下部の白い部分は反射光である。



STAHLWILLE 456
角の横1.5mm幅くらいにモヤモヤっとした帯状の接触痕が付く。前記のクラフツマンと似たような当たり方だ。現行機種はどうか分からないが,昔持っていたスタビレーは材質が比較的柔らかくてすぐにナメ気味になった記憶がある。この優しい当たり方を酷使しても維持出来るのがメーカーの技術力なのだが。


LUX 545412(1/2Sq)
角の横1mmくらいの場所にハッキリとした線痕。クリアランスは大きいようで線状痕が出たのはこの面と対角の一辺のみ。他の面はKTC B3-12のように三角形の痕が対辺で上下に付く。この製品は感じからすると台湾製っぽい。メーカー名は刻印だが,何故かサイズだけがレーザー印字。

このラックスは三井不動産系列のホームセンターであるユニディが直輸入していたドイツのメーカーなのだが,現在は輸入を止めたようだ。



UNIOR 238
角の横0.5mmくらいの位置に線状の接触痕。しかし,食い込んだような痕ではない。クリアランスも比較的少ない感じだ。メーカーの歴史は古いが日本では新参者?のウニオア(ユニオア)はスロベニアのメーカーだ。ドイツ工具っぽい造りで仕上げも綺麗で軽い。なかなか期待出来るメーカーだと思う。しかし,輸入元のウニオアジャパンの倒産により入手困難なブランドになってしまったのが残念。



BELZER 7400SM(アルゼンチン製)
角の横1mm位の幅で食い込んだような接触痕。まさに面で当たって食い込むという感じか。あまりお肌には優しくない形状のようだ。



MAC X612MMR
角の横1mmくらいに線状の接触痕。当たり方を見ると左記のプロトと形状の設計が同じかと思われる。 また,下部の方が多く当たっている事からクリアランスは大きいのだろう。予想通り,反対側は上部が多く当たっていた。ちなみに,下部の白い部分は反射光である。

反対側の画像(参考)



PROTO 5212
角の横1mm位の場所にケガキ線のような接触痕が付く。このソケットは1990年代前半の物だが,座グリ部分のメッキが弱く,すぐに欠けるのが腹立たしい。



Bost 690100(1/4sq)

角の横1mmくらいの位置に帯状の接触痕がハッキリと付いてしまっている。親会社であるFACOMのOGVドライブとは全く違う設計のようだ。写真の向かって左側の面では上部だけが当たっており,USAGと同様の接触痕から考えると,BostとUSAGは同じ工場で生産されているのかもしれない。事実,このソケットの入っていたセットのラチェットハンドルはグリップこそ違うが,ラチェット部はUSAGに酷似だった。ちなみに,このソケットにFRANCEの刻印は無い。



USAG 235
角のすぐ横に0.5o幅の帯状接触痕。ハッキリと付いているが食い込んだような感じではなく,単に押された痕である。他の5面の中で上部だけ当たった痕が付いている面もあるので,クリアランスは比較的大きいのかもしれない。USAGはイタリアのメーカーだがこの製品にITALY刻印は無く生産国は不明。



GEDORE No.30
極めてボルトの角に近い場所に接触痕が付く。このページの一番上で参考に紹介しているハゼット旧型やベルツァーのソケットに近い接触痕なので,面接触とはいえ,限りなく点(線)接触に近い形状で角を痛めると言える。この製品にはGERMANYという刻印しか入っておらず,真のMADE IN GERMANYなのかは未確認。



GEDORE D30
角の横1mm位の場所にケガキ線のような接触痕が付いた。このソケットは食い込みが強い?のか下記の国産FPCのパラボラソケットと同じく,テスト後にボルトの頭がソケットから抜けなかった。ちなみに,この製品にはMADE IN GERMANYの刻印が入り,紛れもない?ドイツ製だ。



SP-AIR SP227-12(インパクト用)
角の横1mm弱の位置にハッキリとした帯状の接触痕。他社の例に漏れず?,インパクト用ソケットはボルトに対して攻撃性が高い傾向にあるようだ。今や世界の一流品と言っていい日本製エアツール。その中でもOEM生産ではトップ?なのがこのSP-AIRだ。外国有名ブランドのエアツールでJAPANの表示があったらSP-AIR製の可能性は極めて高いと言える。しかし,今回テストしたこのソケットにはJAPANの表示は無く,生産国は不明。ちなみに,仕上げは大変綺麗で,Sq側には角の逃げがある。CR-MOの表示があり,材質はクロムモリブデン鋼である。


FLAG 10-3712(ダイヤモンドカット)
角の横0.5oの位置にケガキ線のような痕で,比較的目立たない付き方だ。他の5面では接触痕の付かない面もあるので意外と優秀かも。

蛇足だが,この「FLAG」は工具販売チェーン店である「ストレート」で販売されるまで殆ど知られていないブランドだった。生産元の秦製作所は昔からJIS認定工場であり,海外向けOEM生産では実績のあるメーカーだ。 ブランドの由来は,秦→はた→旗→FLAGだそうだ。蛇足だが,現在の秦製作所はストレートのファミリー企業になっている。



FLAG 10-38126(ナールドデザイン)
角の横1mm弱の位置にハッキリとした帯状の接触痕。けっこう目立つ付き方だが食い込んだような痕ではない。このソケットはFLAGの普及品で梨地仕上げだ。上の物の半額近く(会員価格\290)で買える物だが仕上げは悪くない。しかし,残念な事にこの製品(ナールドデザインタイプ)には12ポイントが無い。

FLAGは上級品のダイヤモンドカットタイプがフルポリッシュの12ポイントで梨地のこのタイプを6ポイントと製品を作り分けているようだ。ちなみに,普及品には通常メッキのスタンダードタイプもあり,こちらの方は12ポイントのみをラインナップする。



Ko-ken 3410M
海外メーカーのOEM品も造るコーケン。ボルトに優しいというサーフェイスドライブ。うっすらとした線状の接触痕が残るが,食い込んだような形跡ではなく優しく当たっている。



TONE 3S-12
角のすぐ横にうっすらとした接触痕が付く。クリアランスが少なく,角の逃げも少ないようで限りなく?点接触に近い面接触というところか。傷は角に近い所に付くので比較的目立たないのだが,締め続けると角も潰れそうな感じだ。



Pro-Auto 0131120
SEKブランドの上級品であるプロオート。角の横1mm弱の位置に帯状の接触痕。ただし,食い込んだような痕ではない。三角形状に付いている面もあるので比較的クリアランスは大きいようだ。SEK(スエカゲツール)は昔から海外メーカーのOEMでは実績のある国産メーカーだが最近は台湾製品も増えた。ちなみに,このソケットはJAPANの刻印がある日本製。



FPC 3SP-12H
ついに?面接触の真打ち登場ってか?(笑
メーカーが自信を持って「これが本当の面接触です」と公言しているパラボラソケット接触痕が殆ど無いのはさすが!これもまた2回テストしたが結果は2回とも同じだった。さらに,接触面積が大きいのか2回とも試験後にボルトの頭はソケットから外れなかった。ここのページでは各社様々なソケットをテストしてきたが,外れなかったのはこの製品とGEDORE D30だけである。

こんな状態。接触したままボルトの頭はホールドされている。傷は付かないが,同じボルトを何回も締めているとボルトの側面は凹むかもしれない。


NEPROS NB3

こちらは同じくNEPROSの6ポイント。上の12ポイントとは違い,ほんの少しだけだがうっすらと接触痕が付いた。




KTC B3-12(21C Ver.)
こちらはやはり普及品。設計はネプロスの6ポイントとは違うようだ。うっすらとした痕が三角形状にハッキリと付いた。そして,この面の反対側にはこのような傷が付く。

どうやらこのソケットは接触角度を作るためにクリアランスが大きい?ようで,テスト時にレンチを無造作に締めると水平に回せずに,このような形状の痕が付くようです。




Ko-ken 3400MZ
3400Mと同様,角の横1mm位の場所に帯状の接触痕。比較的優しく当たっている。この3400MZはコーケンのZ-EALという新製品(発売はH22年だが単品販売はH23年の8月から)なのだが,面接触形状は従来品の3400Mとあまり変わっていないようだ。ただし,従来品と違いこのソケットは高さが低いロープロファイルで,6角穴の深さもボルト頭の厚さと同じくらいしかない。



NEPROS NB3

国産最高級品のNEPROSの12ポイント。驚いたことに接触痕が殆ど無い!ちなみに,下部の白い線は反射光である。2回試験をしてみたが,結果は2回とも同じで接触痕は殆ど付きませんでした。



KTC B3-12W(21C Ver.)
ネプロスの成績が良いので,もしや?と思ったら,期待に応えて?こちらも接触痕が殆ど無い。しかし,ネプロスよりクリアランスは大きい?ようで,スキャン画像ではハッキリ映らないが,よく見ると傷こそ付いていないが,6ポイントと同じように三角形に押されたような痕はある。ネプロス12Pの時もそうだったが,傷が付かないので信じられずに?2回も試験をしてしまった。

ちなみに,こちらも結果は2回とも殆ど変わりがない事を付け加えておきます。



Ko-ken 3405M
角に近い箇所に薄い線状痕。比較的目立たない。上記のトネに似た接触痕の付き方だ。この,フラットドライブという形状は角度が148度で,通常は150度のメーカーが多い中,独自設計の角度を採用。ちなみに,スナップオンのフランクドライブは144度で設計されている。




Ko-ken 3400M
角の横1mm位の場所に帯状の接触痕で比較的優しく当たっている感じだ。右の12ポイントとは明らかに違う痕の付き方。



Teng tools M380512-C(台湾製)
角の横1mm位の場所にハッキリと帯状の接触が付いた。このテングツールはスウェーデンのブランドだが,生産は台湾である。これはメーカーがHPでも公言している。一時期日本でもホームセンターなどでよく見かけたがハッキリとした輸入元は存在しないようだ。イギリス辺りでは比較的ポピュラーなブランドである。このソケットもパッケージのバーコードは50始まり,つまりイギリスでパッケージされた製品だった。なお,見た目では製品の質はそんなに悪くなさそうな感じだ。

(蛇足だが,今回からスキャナが複合機の安物に替わっているのでイマイチ解像度が悪いのはご容赦を!)



JETECH 018312(中国製)
角の横0.5mm弱の位置に三角形の接触痕がハッキリ付いた。クリアランスは大きいようで,上記のMACやKTCと同様,反対側は上下逆向きの三角形接触痕が付いた。このJETECHはスイストゥールの6inドライバーの製造元。下請け専門の感がある中国メーカーの中にあって上海SATAなどと並び,自社ブランド販売が出来る実力のある会社の一つ。仕上げはとても綺麗だ。Sq差し込み側も角に逃げのある面接触的差し込みだ。ちなみに,この製品はホームセンター「コーナン」が直輸入しており,オリジナルソケットとして発売されている。



Hans 3402(台湾製)
角の横1mm弱の位置に線状痕がハッキリ付いた。このハンズは数ある台湾メーカーの中で自社ブランド販売が出来る実力のある会社の一つ。ロゴや品番からしてコーケンをかなり意識しているようで,見た目にはKo-kenか?と思わせる造り。Sq差し込み部も角の逃げがある面接触的差し込みだし,仕上げもとても綺麗だ。しかしながらこのブランドを積極的に?売っていたエイシンとツール王国の倒産により入手困難な製品となってしまった。



GEARWRENCH 80380(台湾製)
ブランドはアメリカだが生産は全て台湾と中国で生産されるギアレンチブランドの工具。ギアレンチというとコンビネーションタイプのラチェットレンチを思い浮かべてしまうが今やソケットやラチェットハンドル,ドライバーやプライヤー類も販売している。

この6ポイントソケットは線状痕は付かず,三角形状に痕が付く面があった。クリアランスが大きいのだろう。傷が全く付かない面もあるので力の掛け方に注意すれば意外とお肌に優しいソケットかもしれない。これは台湾のLEAWAY製。



GEARWRENCH 80488(中国製)
左の6ポイントソケットとは違い,12ポイントソケットはチャイナの上海SATAで生産されている。生産年はこちらのソケットの方が古いので,台湾からチャイナに生産がシフトした訳ではなく,種類別に生産国が分かれているようだ。

この,12ポイントソケットの方は残念ながらケガキ線のような線状痕がハッキリと付いた。同じ生産元の場合,12ポイントの方が接触痕が付かないのだが,ギアレンチの場合は12角と6角で生産国が異なるため設計も違うようである。



SIGNET 12312
角の横1mmくらいの位置に線状の接触痕。比較的ハッキリと痕が付いてしまっている。クリアランスは少なそうだ。このSIGNETはカナダに本拠地を置く会社だが,実はこのブランドには生産工場が存在せず,製品は100%OEM品だ。ラチェット・ソケット類は台湾製で,ギアレンチがSIGNETの主力製品であることから推測するとこれもまたLEAWAY製?だろう。



DeeN DNB3-12W(台湾製)
これはファクトリーギア(FG)オリジナルのソケットだ。角の横0.5oの位置にケガキ線のような痕が比較的ハッキリと付いた。ちなみに,下の白い線は反射光である。仕上げはフルポリッシュで綺麗なのだが,内側までもピカピカに仕上げすぎて?剥がれそうな感じがするメッキだ。ザグリはゼロで製作されている。

付け加えると,初期のDeeNはYK刻印のKo-ken製だったが,この製品になって台湾製(INFARかも?)に変わった。ショップのプライベートブランドは生産元が予告無くコストの安い方に変わるので評価がロット毎に違うので注意したい



DRAPER 13232
角の横1mmくらいの位置にうっすらと0.5mm幅の帯状接触痕。ちゃんと面で当たっている感じだが食い込んだような形跡ではない。工具チェーン店のストレートが以前から扱っているドレーパーはイギリスの会社だが,製品は殆ど台湾メーカーなどののOEM品だ。ラチェットの一部製品はクラフツマンにソックリな台湾LEAWAY製なのでソケットも同様だろう。


METRINCH 15/32&12mm(台湾製)
一時期,深夜TV通販の代表的商品だったメットリンチ。ブランド名はMetricとInchの合成語。その名の通りインチでもミリでも回せるという画期的な?工具である。最近ではミラクルレンチという名称で売られているようだ。

ご覧の通り,超サーフェイスなデザインゆえ,ボルトに対する攻撃性は少ないようで,角から2mm近くの場所にうっすらとした線が入る。食い込んだような痕ではなく優しく当たっている感じだ。しかし,ガタが大きいゆえ,大きなトルク掛けたらナメそうな感じだ。

ちなみに,生産は台湾のCENDAI INDUSTRIALというメーカーである。

※スキャナーの読み取り面が汚れていて画像にゴミが写っているのはご容赦ください。



AmPro-12mm(台湾製)
角の横0.5mmくらいの所に線状の接触痕が付いた。このAmProは台湾のFrenway Products Inc.の製品だ。仕上げはけっこう綺麗で,一見コーケンっぽい感じ。座グリはとても深い。ちなみに,日本ではスーパーチープツールズが輸入している。
これも参考。


Gator Grip(アメリカ製)
ボルトの形に合わせてピンが引っ込みホールドするソケット。こういう形状なので差し込んだ時の填り方によってどこが当たるかわからない。今回は角の横だが通常の逆側面に接触痕が付いた。画像だとわかりにくいが,丸棒が完全に食い込み,かなり深くえぐれている。接触痕は,ここと反対側の角の2カ所しか付かなかった。どうやら2面しか(というよりも棒が2本しか)接触していないらしい。最近,台湾製で棒が6角形の物も売られているが,類似品とはいえパチ物ではなく別パテントの製品のようだ。六角棒の物はゲイターグリップのように中心の太い六角棒が無く,すべて同径の六角棒で構成されている。

参考:ゲイターグリップ関連のUSパテント



右の二つは参考。 ダナハーツールグループ(現アペックスツールグループ)から発売されていた障害物をスルー出来るソケット。ギアとソケットが一体でトルクレンチが装着出来ないので力を想定で10秒掛け,ねじ切るまで回した。このソケットのシリーズは最近商品構成が縮小の傾向で,生産中止なのかも。ギア機構剥き出しの構造はゴミ噛み等のトラブルの可能性もあり,その点が改良されている後継モデルは同グループのKD-TOOLから好評発売中である台湾LEAWEY製のギアソケットということか。ちなみに,ギアソケットはシグネット他にもOEM供給されているし,発想は他のギアレンチ系工具製造メーカーにパクられて?いる。



ARMSTRONG 38-612
アームストロングはエリミネーターという名で売られていた。マトコとは同じパテントだが,こちらがオリジナル。うっすらとした接触痕でマトコとは明らかに設計が違う当たり方で,クラフツマンに近いような感じだ。


MATCO BLP12M6
マトコではプロフィールプラスという名で売られていた。このソケットはパワーツール用だ。角横1.5o位の場所にケガキ線状の接触痕。アームストロングとの違いはメッキだけかと思ったが,ソケット形状も違うみたいだ。

現時点でのまとめ

なんと!一番お肌に優しいソケットは,国産がネプロス12PとFPCのパラボラ,輸入品がファコムの12P。僅差でアームストリング38-112でした。しかし,それだけで比較するとファコムは惜敗。ネプロス12Pとパラボラの場合は傷の無さでは同列。しかし,パラボラのボルトが外れなかった結果を考慮するとパラボラの方がボルトに対して攻撃性が高そうだ。そして,下で説明する2つの面接触タイプで評価すると,フランクドライブ型状で一番優しいのがネプロス12Pで,ロックライト型状で一番優しいのがFPCのパラボラと言えるかもしれません。ネプロス6Pとファコム12Pが殆ど同じ感じで,そのネプロス12Pとネプロス6Pの中間がKTCの普及品であるB3-12Wといったところでしょうか。

その他,比較的優しい当たり方をするのはファコム6P,クラフツマン,アームストロング。コーケンのサーフェイスソケット。うっすらとした接触痕が残ります。反面,酷いのはアルゼンチン製のベルツァーやS・Kのインパクト用。これは面状に食い込むという一番優しくない当たり方だ。しかし,裏を返せば一番力が掛かると考えられ,ナメ気味のボルトには有効かもしれない。

スナップオン,プロト,マトコなどは角の横にケガキ線のような線状の接触痕が残るタイプ。スナップオンのパテントを参考にしたメーカーが多いだけに,このタイプが一番多いと考えられる。

ただし,この結果は検証した中での話。他にもお肌に優しいメーカーがあるかもしれない。最近気になるのは,各社から発売されているスプラインソケット。当然,6角専用ではなく汎用的な形状なので「お肌に優しい」とは言い難いだろうが,どういう接触痕が付くのか興味あるところだ。

蛇足だが,使い込んでナメ気味になったソケットには同じ接触状態は期待できないので,材質の面も考慮しないと優劣は決められないかも。ある程度使い込んでも新品時の接触状態を維持出来るのが一流メーカーたる所以で,いくら形状が優れていても変形してしまっては意味がない。

とにかく,お肌に優しいという点では輸入工具は惨敗か?とにかく,ネプロス,KTC,FPC製品の良好な接触状態には驚きで,使い込んだ後のそれら製品への期待はとても大きい。また,FPCのパラボラで同じボルトを何回も締めたらどういう接触痕になるのか?興味は尽きない。

(注:この接触状態は,あくまでこの検証の結果であり,ネプロスの他,良い結果のメーカーへの過剰な期待をしないように。買う前の参考程度にとどめて頂けたら幸いです。)

点接触?線接触?面接触???

「某ブログで,お前の表現が話題になっているぞ」と,友人からタレコミを戴いた(笑。そのページによれば,「点接触」という表現は間違いで「線接触」が正しい?とのことらしい。そこで,弁解という訳ではないが何故?「点接触」という表現なのかを一応理由として書いておきましょう。

俺が書く「点接触」という表現は「ボルトの角のだけが接触」という意味で,敢えて書くなら「一点接触」。確かに接触痕は線状ですが,あくまで接触しているのはボルトの角の一点のみ。ボルトに厚みがあるから接触痕は「一点*ボルト厚長さ」の線になります。それに対する面接触とは「接触は点ではなく,ソケット側に作られた平面接触部とボルト側の側面お互い平面同士で接触している」ということ。

だから面接触というより「平面接触」。(しかし,点接触でもボルトの角が潰れれば平面状になるから,ある意味で面接触???)
しかし,見た目だけを真似た設計の悪い面接触形状の場合,単にボルトの角の逃げの空間を作っただけなので,ボルトの角以外の部分に一点で接触しているだけなのだ。このようなメーカー側が主張しているだけ?のドライブ形状は「“自称”面接触」形状と呼んでいいだろう。



線状痕が細い線になるほど平面で接触していない可能性があると言えます。「線接触」という表現が一般的に使われだして久しいですが,それが正しいとして「線接触=線状接触」とするならば?対する表現は面接触ではなくて「帯状接触=帯接触」にしなければならないと俺は考えています。


あと,「工具の謎」のぺージでも記述していますが面接触には二つのルーツがあり,一つはKELSEY-HAYES(UTICA)のパテントLOC-RITE(US PAT.3125910),もう一つはご存じSnap-onのFLANK DRIVE(US PAT.3273430)この二つのパテントは似て非なるもので,上の図をよく見ていただけると解るかと思いますが,ロックライトは「ソケットの曲面」対「ボルト平面」の接触フランクドライブは平面同士の接触なのです。(実際にはボルトの角を挟んだ平面2箇所の同時接触はあり得ない?筈だが,まぁ,これはパテント申請のための理論という事で…)

だからLOC-RITEはサーフェイスの元祖と言えるかもしれません。上記のテスト結果でも解りますが,現在の面接触ドライブにおいてもこの2つのタイプに分けることができます。モヤモヤっとした感じの接触痕の物は曲面接触っぽい接触。線状の接触痕の物は平面接触で,接触痕の幅が広いほどソケットの「作られた平面接触部」の幅が広い?ということになるのでしょう。

蛇足で最後に付け加えると,言葉としての「点接触」は,まさに針先同士のような接触の事なので,旧型ソケット対ボルトのような場合は,ソケットに対してボルトの角一端しか接触していないということで「端接触」が一番妥当な表現かもしれません。敢えて俺が主張するなら?平面や曲面での面接触に対する言葉は,角に限らず一端のみが接触しているということで「端接触:たんせっしょく」を提案します。設計の悪い「“自称”面接触」は角こそ潰れないですが,ソケット側の「作られた平面接触部」対「ボルト側面の平面」ではなく,「ソケット側の或る一端部分」対「ボルト側面の平面」での接触しかしていないですから。だから,これからは旧品のドライブと設計の悪い「自称面接触ドライブ」を「端接触」と呼ぼうではありませんか…!?(笑




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