整備工具,はじめの一歩(その1) (バイク版:初めて買う工具) 2ちゃんねるのバイク板工具スレでは,いつの間にやら?俺の書いたレスがテンプレートになってしまいました。 この内容は一般的な国産中排気量車を想定していますので,大型の外車などには当てはまらないし,ここに載 っているサイズその物を買う事を勧めている訳でもないのでご注意を。あと,これは本当に何も持っていない人 がまず買うべき工具の説明で,整備するための必要工具一式という意味ではありません。分解整備するために は他にも必要な物はたくさんあります。 |
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第一段階 とりあえず車載工具と同じサイズの物を買う。車載工具って,スパナ,ドライバー, プラグレンチ,プライヤー,ボックスレンチ(片口),ヘックスLレンチ程度の物だと思われる。 だから,第一に揃えるのは下の工具。(各工具にカーソルを当てると説明が出ます。) +1,2,3のドライバー。8mm,10mm,12mm,13mm,14mm,17mmのコンビネーションレンチ。 170mm程度のカッター付きラジオペンチ。17*19,22*24のメガネレンチ。 1.5〜10mmのロングタイプボール付きLレンチセット。ハンマー。3/8ラチェットハンドル 。 8mm,10mm,12mm,13mm,14mm,17mmのソケット。プラグソケット。75mmエクステンションバー 。 ワイヤブラシ(歯ブラシ型)。タイヤゲージ。ハンドインパクト(ショック,アタック)ドライバー。 ソケットレンチはセットで買わない。不要なサイズもあるし,後にツールボックス買った時ケースが邪魔。 モンキーレンチは初心者の場合これに頼るとボルトのサイズを感覚的に覚えられないので,この段階では 買わない方がいい。 ボルトの頭を見て,素早くピッタリサイズの工具を手に取る事が出来るまで我慢だ。 国産で揃える場合の例として,ドライバーはトネのパワードライバー。コンビとメガネはKTC。 ラジオペンチはケイバのETシリーズ。Lレンチは首の短いミトロイ。プラハンはユニコンハンマー 。 ソケット&ラチェットとハンドインパクト(ショックドライバーやアタックドライバー)はコーケンってところか。 他にもドライバーはベツセルのメガドラなど外国製に負けない良い物がある。 タイヤ(エア)ゲージはASAHIのBC-1かBD-1 注:リンク先は全て別ウィンドウで開きますので開きすぎに注意!PCの動きが悪くなります。 また,最近はメーカーのカタログがフラッシュ使用で頻繁に更新されるためリンク切れはご容赦! 参考リンク:これを熟読すれば使い方がわかる。 正しい作業工具の使い方(岡野機器) 正しい工具の使い方(KTC) 工具とは何か?入門編(スエガゲツール) |
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12角(12ポイント)か6角(6ポイント)か?仕上げは? ボルトナットに差し込みやすいのは当然12角だが,ソケ ットをラチェットレンチで使う場合,差し込んだら回すだけ なので,さほど変わりは無い。メガネの場合は回すため に何度も抜き差しするし,障害物があったら細かい送り が出来なくなる6角は不利だ。6角の方がナメにくいとい う説もあるが,始めに買うのは使いやすい12角の方が いいと思う。 工具の表面仕上げは,ピカピカのフルポリッシュか梨地 か迷うかもしれないが,安物のフルポリッシュは間違い なくメッキが剥がれるので梨地の方がいい。メッキの仕 上げより角に面取り処理がしてあるかの方が重要。面 取りが無く角張っている工具は角からメッキが欠ける事 が多いからだ。 あと,面接触か点接触か?だが,市場に出回る工具の 殆どが面接触ドライブになっている現在,これを語る事自 体が意味を無さない事になりつつあるようだ。 (画像の各工具にカーソルを当てると説明が出ます) |
丸かダルマか?クイックリリースの有無は? 製造コストの関係か安物のソケットは殆どが丸形のた め,丸=安物と思いがちだが,名の通ったメーカー品な ら丸形でも問題ないしギア送りが細かいので使い易い。 何故ギアの送りが細かいのかというと,ボディの内側に ギアが刻んであり,その内側をラチェット機構が回るという 内歯構造にある。 ちなみに,何故ダルマかというと裏側の蓋の形から来 ている。表から見た形から小判型とも言う。外国では 楕円の硬貨が無かった?ようで,teardrop(涙滴)とか, pear(洋梨)と呼んでいるようだ。歯の構造に違いがあれ, ダルマ型の物はギア部が回転する外歯構造だ。蛇足 だが,最近は中の機構が次々に改良され,外歯構造 でもギア送りが細かい物も多く発売されている。 また, クイックリリース付きはボタン一つでソケットが外れ るので慣れると楽だが,付けるときはボタンを押さないと ソケットが付けられない。また,クイックリリースの分だけ 価格も高くなるので無くてもいいし,一般使用では問題 ないが,Sq部にシャフトが貫通するため強度は下がる。 (画像の各工具にカーソルを当てると説明が出ます) |
ボルスター(軸元ナット) ここにスパナやメガネレンチ等を掛けて回すと力が 入る。ちなみに,アメリカのメーカーはインチサイズなの で注意。ちなみに,S・Kはメーカーがアメリカだが,こ のドライバーはフランス製でボルスターはミリサイズだ。 (ボルスターにカーソルを当てると説明が出ます) |
スパークプラグソケット 左がゴムタイプで右がマグネットタイプ。滅多に無いが マグネットは電子部品に支障が出る事があるらしい。 両方18mmだが,バイクを買い換えたらSnap-on(左) では太くて入らなくなり,肉薄のネプロス(右)を買う 羽目に…。どうせなら最初から肉薄の物を買おう。 (画像の各工具にカーソルを当てると説明が出ます) |
ダイヤル型以外のタイヤゲージ各種 上がデジタルで下がバータイプ。単位はKpaだが,輸入 品の場合psiやberなど色々あるので注意。バータイプの 場合,口は90度曲がりの方が使いやすい。カーショップ で売られている物は4輪用で測定範囲が広すぎてバイ クには不向き。そして,安いダイヤル式は精度が低い。 ブレーキディスクが大きくてクリアランスの無い車種は首 の長さと角度に注意しないと使えない事も多いので注意。 (画像の各工具にカーソルを当てると説明が出ます) |
ハンドインパクト(ショック)ドライバー ソケットレンチと同じく3/8Sq(上)と1/2Sq(下)がある。 本来はここにビットホルダーを差し,各種ビットを付け る訳だが,ソケットを差し込み使う事も可能だ。Sq差し 込みになっていないビットホルダー直付モデルもある。 ちなみに,アタックドライバーはKo-kenの商品名だ。 (画像の各工具にカーソルを当てると説明が出ます) |
(写真にカーソルを当てると説明が出ます) トルクレンチについての考察:初心者が最初から買うべきか?買わないべきか? 「初心者だからこそトルクレンチが要るんじゃないの?」という意見があるが,個人的にはボルトナットを感覚的に 締め付けトルクを覚えられないので要らないと思う。これはどういう事かを説明すると…。 ボルト類の扱いに慣れないズブの素人?がボルトの締め方に慣れるのには3種類の過程が考えられる。 1,締めるために,まずトルクレンチを買う→それで締める→以後トルクレンチで締める事を励行。トルクレンチに よるボルト締めに慣れる。しかし,普通の工具での締付はイマイチ不安。 2,手トルクで締める→締めすぎでボルトをねじ切る→トルクレンチを買う→それで締める→以後,ボルト類は必 ずトルクレンチで締める事を励行。 3,手トルクで締める→締めすぎでボルトをねじ切る→以後手トルクで慎重に締めて失敗しないように注意する。 →それでも不安があるのでトルクレンチも買う→重要な箇所はトルクレンチで締める。 否定するのは1の場合で,俺の考え方は3です。言いたい事は「失敗しないように最初からトルクレンチを使え よ。」ではなく,「トルクの事を理解してから買っても遅くないんだよ。」ということ。1の場合ではトルクについて理 解しないままトルクレンチで締めた値が絶対と思いこんでしまう可能性がある。まぁ,ある程度慣れたところで多く の人がこの間違いに気がつくだろうが,それに至る過程も経験した方がいいのでは?と思う。 「じゃぁ,それまでに壊したらどうすんだよ?」という意見もあろうかと思いますが,俺の場合は壊していい物での 練習でした。いきなり自分のバイクを弄るのもいいのですが,構造がわかっているのと,本当に初めてでは,不 安感に雲泥の差が出ます。解体屋で買ったボロエンジンであっても,弄った(壊した?)経験があれば,トルクレ ンチを手にして初めて自分のバイクに挑むより安心感があります。トルクレンチがあれば締め付けに対する不安 は減るかもしれないが,その他の未知の物に対する不安感は払拭出来ないのです。 また,トルクレンチはソケットしか使えないし,その長さで使える場所は少なくて,多くの場合もっと短いコンビネ ーションレンチとか,ラチェットハンドルを使う事になる。その時の締付トルクはどうするのだろうか?トルクレンチ と同じ感覚で締められるのだろうか?だから,日頃使う工具でトルクの感覚を覚えた方がいいと思います。 ボルトやナットには締付トルクの幅があるので,相当な馬鹿力で無い限り,締め過ぎる事は無いはず。ネジ切る 時って「緩んだらどうしよう!」と思うあまり,さらに締め上げてしまって起こす場合が多い。危なそうな場合はレン チを短めに持つとかをすればいいでしょう。 とにかく,「はじめに締め付けトルクありき」ではなく,締める対象物をゆがませない(変形させない事)やボルトが 緩まない事が大切なのであって,どれくらいの力で締められているかではないのです。確かにマニュアルには全 てのボルトについて指定トルクが書いてある訳ですが,それは絶対値ではなく幅があります。また,相手のネジ 山が損傷していたら指定トルクで締めてもナメる事があります。その場合は臨機応変に,締め付けトルクを緩ま ない程度に弱めにしなければならない場合があるかもしれません。その辺のトルクの感じを体感的に覚えましょ うという事です。我々サンメカが目指す物は,「手ルクレンチ」でぴったりのトルクを出す事ではなく,ボルトやナッ トに対して緩まなくて壊れないトルクを掛ける事なのです。 注:この件は工具スレで何度もループする話題で,あくまで経験から来る俺個人の意見です。 だから,「自分には絶対必要なんだ」と思った人は迷わず最初からトルクレンチを買いましょう。但し,トルクレンチを 最初から買うならば,それだけで回す事を考えないこと。他の工具で締めた後,トルクレンチに持ち替える事によっ て締め不足,締め過ぎなどの感覚を養っていくものだということを肝に銘じて…。 |