国外不出の工具たち???(その5:CRAFTSMAN編)
アメリカから国外販売不可?の工具を「ヤバイ方法」(ウソ)で個人輸入してみました。
CRAFTSMANの工具(ロゴをクリックでリンク    Sold by Sears, Roebuck Co 
おそらくアメリカで一番有名な工具ブランドであるCRAFTSMAN。ここもまた「その2」で紹介したKOBALTと同様に工具生産メーカーではなく,老舗の通販会社であるSearsのオリジナルブランドだ。製品は100%OEM品で,現在レンチ類は1990年にDanaher傘下になったEASCO HAND TOOLSが製造を担当している。
蛇足ながら付け加えると,ダナハーというのはツールメーカーではなく,産業用や医療用機器,測定器などを生産販売する巨大企業グループだ。さらにその傘下にダナハーツールグループがあり,幾つかのブランドを擁するが各ブランド毎に生産工場が存在する訳ではない。MATCOTOOLS,EASCO,JS TECHNOLOGY,台湾LEA-WAY,上海SATAなどの各工場が互いに相互供給してMATCO,ARMSTRONG,ALLEN,KD,SATAなどダナハーが擁するブランドで発売。その他,発売元からの委託でNAPA,CRAFTSMAN,KOBALTなどを生産。台湾LEA-WAY単独ではGEARWRENCHを生産している。(注:ブランド=生産工場なのは上海SATAだけかと思われる。ちなみに,上海SATAはマークこそMATCOと同じだが,台湾LEA-WAYの系列会社のようだ。)


今回輸入したクラフツマン製品。(現地価格/円換算全費用)

チタンコーティングリバーシブルギアードレンチ8本セット($139.99/\22,856)
リバーシブルギアードレンチ5本セット($59.99/\9,794)
ギアードレンチ用ソケット8個セット($29.99/\4,896)
トルクメジャリングシステム($119.99/\19,418)
今回輸入の工具も全てアメリカ製です。(トルク表示メーターは組立がアメリカ国内)

旧型品ならクラフツマンの並行?輸入業者であるザマ・スティーブス(ZSI)で安く買えるので,今回は新製品を中心に輸入してみました。しかし,そのZSIも店で直接訊いてみると今は殆ど輸入していないそうで,抱えた在庫を処分のためヤフオクに出品しているだけだそうだ。

蛇足だが,その昔クラフツマンにも正規輸入会社が存在した事を覚えている人がいるだろうか?1970年代には日本にもシアーズの正規代理店が存在したのです。その代理店とは西武グループ。特定の西武デパートと西友ストア店内にシアーズショップがあり,クラフツマンの工具が少しだけ置いてありました。ちなみに,その時代に俺が初めて買った輸入工具は西友大船店で買ったクラフツマンのメガネレンチ。西武デパート渋谷店のシアーズショップでも買った事があります。



ギアードレンチ用ソケット

この手の製品の多くは頭部HEXサイズが13oで統一されているようだが,これは各サイズともソケット側と同寸にしている。

あと,HEX部左面に縦線が2本見えると思うが,これは接触痕ではない。メッキが割れないように凹みを2本付け面接触?にしており,ベラのヘックスプラスと同じような考え方?の形状を持っている。

因みに,サイズ表示はEASCOがパテントを持つレーザー刻印で,最近のダナハー製ソケットは順次レーザー刻印に変わりつつある。

ソケットの接触面のテスト結果

CRAFTSMAN 42424
(ギアードレンチ)
同じ品番だが上側がフルポリッシュの通常品で,下側はブルーチタン
コーティング仕上げの物。中身は同じかと思ったらチタン仕上げの方が
ギア側の面取りがチョットだけスリムだ。ギア数はお決まりの?72歯。
外観はギアレンチとソックリでも当然?中身は違う。EASCOの持つパテント
US PAT.6971287で作られているようだ。ちなみに,チタンコーティングの
物はブルーの他に通常のチタングレー色の物もある。

ちなみに,Made in USAのギアードレンチはマトコ,アームストロング,
クラフツマンの3つのブランドからしか出ていない
し,仕上げは違えど
明らかにパテントと製造工場は同じなので,その中でも安いクラフツマンが
一番お得?と言える。まぁ,チタンコーティングの物はアームストロングよりも
高価でマトコに迫る価格な訳だが…。ちなみに,マトコやアームストロング
ではチタンコーティングの工具は発売してない。

注:ギアレンチは台湾LEA WAYが生産する固有商品なので,敢えて「ギアードレンチ」と表記してます。ギアレンチと
今回紹介したレンチは似ていますがパテントも生産元も違います。ギアレンチと呼べるのはギアレンチだけなのです。
とはいえ,現在のギアレンチは「ギアレンチ」という工具ブランドになり,ラチェットではないレンチやプライヤーなども発売
しています。ちなみに,ギアレンチブランドの工具はチャイナ製になりつつあり,LEA WAYの中国工場(SATA)が生産して
いるようです。

H23年11月現在,上記のリバーシブルタイプ以外のクラフツマンブランドのギアードレンチは,やはりチャイナ製に…!。




トルクメジャリングシステム
要はセンサー部と表示部が別体のデジタルトルクレンチである。差し込み部は1/2Sqで
ラチェットハンドルやスピンナーハンドルを差し込んで使います。センサー部と
メーター部は1本の線で接続されるが,使ってみると,意外と配線が邪魔。
しかし,表示部が大きく見やすいのと,他の機械式トルクレンチの値が正常
なのかを簡易的とは言え正確に確認出来て校正の目安になるのも利点。



無事?ソケットも挿す事が出来て,めでたく使用開始。
とりあえず?バイスに挟んだボルトを無駄に締めてみる。この力が3.3Nmってか(笑


↑↑↑↑↑
しかし,困った問題が!!
使おうと思ったら,なんと!メッキが厚い?のか凸部が太くてソケットに入らねーよ!(怒



ということで,切り粉がセンサー部に入らないようにビニール袋でマスキングして,メッキをドレメルで削る。



これで解決。
まぁ,アメリカ製なんてこんなモンでしょ(笑
さらに調子に乗って?こんな物も輸入してみた。 


アメリカの通販会社はクリスマスシーズンになると国内送料が無料になる場合が多い。シアーズも同様で,
昨年の暮れは送料が無料だった。そこで,チャンス?とばかりにこれを注文(笑。新製品のCROSS-FORSEという
コンビネーションレンチのセット($69.99)と1/4Sqのラチェットハンドル($24.99)だ。この工具も両方共アメリカ製。



クロスフォース コンビネーションレンチはこんな感じ
(上が上面で下が側面)
メッキはピカピカのフルポリッシュ。しかし,何となくボテっとした感じのメッキだ。
以前から台湾のKABOからもBobby Hu氏のパテントによる捻ったデザインのレンチ
発売されており,考え方はそれに近いのだがクラフツマンの方がデザインが綺麗でスマート。
要は,押す面を大きくして,力を入れても手に食い込んで痛くならないデザインという訳だ。
ちなみに,これと同じデザインのX-Beamと呼ばれるギアレンチも台湾LEA WAYがH18年
10月より生産開始しており,H19年3月にまず,シグネットブランドからX-Beamギアレンチの
発売が開始された。また,このCROSS-FORSEと同形状のXL X-Beamというコンビネーション
レンチもギアレンチブランドから発売されているが,こちらの方は同じパテントで製造された
台湾LEA WAY製である。



Cross-Forse の説明図(参考)
手に食い込まない構造が解るでしょうか?


オープンエンド部
下に敷いたウエスの編み目が映り込む
くらい綺麗なフルポリッシュ。ヤスリ目など
は殆ど無く,仕上げはとても良い。



リング部
こちらもオープンエンド部と同様でとても
綺麗だ。ザグリは少ない。ハンドルに力を
掛けられる構造ゆえ?強度を確保する
ためなのか従来のクラフツマンよりだいぶ
肉厚になってしまった。外寸をノギスで
測ってみると,18mmのレンチでは従来
製品が25.5mmなのに対し,この製品は
28.6mmもあった。これはちょっと残念。



CRAFTSMAN 44994(1/4Sqラチェットハンドル)
Thin Profire Ratchetとパッケージに書かれているとおり薄型のラチェットだ
従来の物に比べると本当に薄い。これもEASCOの持つパテントで作られており
上記のギアードレンチに近い構造を持つ。外歯式で60歯,クイックリリース付きだ。
デザインと仕上げこそ違えど,MATCOのAFR5Tという$64.95もするラチェットと
クイックリリース以外は基本的に同じ。マトコにはクイックリリース製品は無いので,
むしろ クラフツマンの方が進んでいる?ちなみに,このラチェットにもチタン仕上げ
の物があるのだが,残念ながらギアードレンチと同じくセット売りしかしないようだ。



厚さの比較
上から今回輸入のCRAFTSMAN44994,その下は従来から持っている普及品の
CRAFTSMAN44807。参考に同じEASCO製のKOBALT22700も置いてみました。
こうして見ると厚さは明らかに違う事が判ると思う。頭部の厚さは実測で上から
9.6(20)mm,11.9(23)mm,11.8(23.1)mm。ちなみに()内はボタンからSq部先端まで
の厚さ。実測だと若干の差はあるが下の二つは同じ厚さで作られている。



内部構造
赤い部分はシールド用のOリング。
しかし,Snap-onに比べると密閉
構造は簡略的だ。単にダストの
進入防止だけなのかもしれない。



構成部品
ギアレンチテクノロジーとでも言うべきか?
他社のギアレンチ系工具と類似の外歯
構造。バラす時は極小スプリングと
キャップを飛ばして紛失しないように
注意したい。

そして,今回はこんな物も輸入してみた。(H20.1.20add)


ロッキングフレックスとクロスフォースのギアード(ラチェッティング)レンチ
先に輸入したギアードレンチとクロスフォースレンチの使いやすさにすっかりハマった
俺。ある日クラフツマンのページを見ていたら,クロスフォースのギアードレンチを発見!
「ギアレンチ」(台湾製)のX-Beamとは違ってこちらはリバーシブル。しかも,Made in USA
なのだ。これはもう買うっきゃない???そして,ついでに?同じくアメリカ製のロッキング
フレックスラチェッティングレンチも同時輸入。今回は日本へ発送可の出品者をeBayで
探して落札。両方合わせて日本への送料込みで$209.20。正規に買うと工具だけで
$249.98だし,アメリカ国内送料+転送送料で,おそらく$350くらいになるだろうから,
これは安かったと思うのだが。



「Made in USA」,永久保証。
 台湾製が殆どを占めるギアレンチ系工具の中で,この表示は勲章モノだろう。
注:H23年中頃からロッキングフレックスレンチはチャイナ製に変わってしまいました。
その他,リバーシブルではないギアードレンチもチャイナ製に…!H23年11月現在,
リバーシブルタイプはUSA製だが,これもいずれチャイナ製に変わってしまうんだろうなぁ。残念!




フレックスラチェットヘッド

角度は90°曲がるのだが,ロック出来る
最大の角度は左右ともここまで。



ロックレバー
このレバーの形状が意外とクセモノ。
リバーシブルに慣れていると,つい方向
切り替えのつもりでこのレバーを操作して
しまう事が多い。ちなみに,この形状と
機構はパテントを取得しているオリジナル。



両者のリング部分
ロッキングフレックスの方は切り替え
レバーが付かない代わりに回転方向の
矢印が刻印される。これは他社の製品と
同様だ。ギアードレンチには切り替えレバー
が付くが,クラフツマンの切り替えレバー
は他社に比べて短くてフラットなので操作
が少ししづらい。デザイン上の理由もある
だろうが,凸部を付けるなりして改善の
余地はあるだろう。



上がクロスフォースレンチで下が今回輸入のクロスフォースラチェッティングレンチ
並べたのは13mmの物だが,リング側の大きさを除けば殆ど同形状。ダナハーの一ブランドではないクラフツマンであるが,実はダナハーツールグループの中枢メーカーであるEascoの主力製品なので,新製品やパテント取得製品は一番最初に「クラフツマン」ブランドから発売される事が多い。

現在,Eascoは自社ブランドでの販売はしていないが,Easco=CRAFTSMANといっても過言ではないだろう。蛇足だが,Easco=MATCOでもあり,マトコのレンチ類もEascoが生産している。つまり,クラフツマンの高級品はマトコのディフュージョンライン的存在?でもあり,ダナハーツールグループ内においては,アメリカで生産しているEasco製の廉価版がアジアで生産される台湾LEA-WAY製と上海SATA製なのである。アメリカ製とアジア生産品は同じパテントで作られる物もあり,一見同じに見えるが微妙に変えて作られている。



オープン部の比較
奥側がギアードレンチの物で,厚さは8mm。
手前のクロスフォースレンチの方は厚さが
7.4mmなのでこちらの方が薄い。(共に
13mmのレンチの場合で実測寸法です。)

付け足し
クラフツマンの工具は日本での場合,工具関係掲示板ではあまり評判は良くないようだ。それは何故なのか?従来から日本で安く売られていた物はクラフツマンの中でも普及品の工具であり,主に家庭向けに作られている仕上げの悪い物。それで日本ではクラフツマン=安物工具という図式が出来上がってしまったらしい。しかし,クラフツマンにも上級な物とPROFESSIONALというプロ向けの物があり,それらは比較的高価で,同じダナハー傘下のアームストロングに迫る品質なのだ。今回輸入した物は,まさにその上級な?クラフツマンそのもので,その使用感はプロト,S・K,J.H.Williamsなど他のインダストリアル系の工具メーカーに比べても遜色なく,むしろアームストロングと同等品と言っていい品質の物だった。おそらく掲示板でクラフツマンの事を悪く言う人は,この上級ラインナップを知らなくて使ったことのない人なのだろうと思われる。とにかく,どこのメーカーでもそうだが,普及品と上級品のラインナップがある物は,メーカー名だけでの評判は当てにならない事を注意すべきだろう。ちなみに,日本のメーカーの場合,その点を考慮している?のか,ネプロス(KTC),ファインツール(TONE)など違う名称で商品展開をして差別化を図ると同時に,逆に?上級品の評判とイメージをを普及品にもラップさせて普及品のイメージアップを図っているようである。
参考画像


クラフツマン製造元のEascoが自社ブランドで発売していた時の製品

画像は某HPより。これらは俺の所有物に非ず。 画像は某HPより。これは俺の持ち物に非ず。


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