KELSEY-HAYES(UTICA-BONNEY)における面接触工具の謎
このメーカーの方がSnap-onより面接触のになるのが早かった感じだ。ホントに面接触の元祖はSnap-onなのか?



1960年代のUTICAのパッケージ。ラベルが貼り重なっており,下にUTICA-HERBRANDのラベルがある。 
UTICAのマークデザインは国産のメリーがパクっている。HERBRANDは現在カナダのメーカーとして健在。
 また,KELSEY-HAYESも健在でホイールやブレーキを造っており,1984年に分社したHAYES BRAKEは,MTB用
ディスクブレーキのメーカとして日本でも知られている。ちなみに現在のUTICAはトルクレンチのメーカーだ。



LOC-RITEドライブのレンチをスキャナーでスキャンしてみた。
上:BONNEY,中:UTICAのソケット,下:KELSEY-HAYES。レンチの形はMACに酷似。



表はこんな感じ。PAT'P(PENDING)ではなくPAT'D(DESIGN?)のようだ。BONNEYにはLOC-RITEの文字は無い。
スキャンすると真っ黒だが,工具の仕上げはフルポリッシュのピカピカメッキ仕上げだ。メッキの感じはS・Kに近い。

        

これがSnap-onのFLANK DRIVEより古い?LOC-RITEの形状である。
初期のBONNEYはインチサイズだけが面接触だった。


 調べてみると,UTICAが1956年にKELSEY-HAYESに合併され,1961年にはHERBRANDと合併。BONNEYは1964年
に合併されて,その後1967年になるとKELSEY-HAYESはUTICAをトルクレンチの製造メーカーTRIANGLEに売却。
さらにその後,社名がUTICA TOOL CO. に変わり,レンチのブランドはUTICA-BONNEYになったようである…。
今まで謎だったUTICAソケットの三角形刻印はイヤーマークではなくて,TRIANGLEのメーカーマークだったのか…!

UTICAがKELSEY-HAYES傘下だったのは1956年から1967年の期間で,BONNEYブランドではなく,KELSEY-HAYES
ブランドのLOC-RITEのレンチが存在するという事は,面接触はこちらが先と考えられなくはないだろうか?BONNEYは
1964年に合併で,それ以前のBONNEYブランドのLOC-RITEは存在しない?はず。面接触の元祖と言われるSnap-onの
FLANK DRIVEのパテント(US PAT.3273430)は1964年の申請のようだし,どう考えてもUTICAの方が先のような気がする。
ちなみに,取得年は調べられられなかったが,LOC-RITEのパテントは(US PAT.3125910)でこちらの方が番号も先だ…
この辺りは1964年から1967年の間KELSEY-HAYESブランドとして発売したかを確かめないとハッキリ断定できないが…。

 と,思って,USパテントの検索ページでパテント取得年を調べたら…。何の事はない!
LOC-RITEのパテント(US PAT.3125910)は1964年3月で,
FLANK DRIVEのパテント(US PAT.3273430)は1966年9月だった。
やはり,面接触の元祖はSnap-onではなかったのだ。どうも,日本の販売戦略なのか,Snap-onには
こういう日本で作られた神話?があるようで,ユーザーが何の疑いもなく信じ込んでいる面がある。
確かに「FLANK DRIVEという形状の面接触ドライブ」の元祖はSnap-onかもしれないが,
面接触ドライブその物の元祖はSnap-onではないのである。
これは,ソケットとハンドルを分離した元祖
というのも疑問で,Snap-on以前にも分離されている製品は存在する。この辺りはまた次の機会に…。
ちなみに,形状図(上記リンク参照)を見ると,LOC-RITEは角にを逃げを作り曲面でナットに面接触するのに対し,
FRANK DRIVEは144度の角度を取り平面に近い形で面接触している事が解る。さすが後発メーカー(笑

参考資料LOC-RITE DRIVEとUTICAの歴史のPDFファイル(2069KB)UTICAの1977年カタログより。
Snap-on Flank DriveについてのPDFファイル(1084KB) Snap-onの1978年カタログより。
(日本語版は当時のSnap-on輸入元である内外機器の資料です。販売店向けの単純な直訳資料…)



BONNEYの雑誌広告。1950年頃。



BONNEYの雑誌広告。1953年頃。


Snap-onにおけるV品番工具の謎。




全て1950年代以前のSnap-onである。3/8Sqなので,品番は今と同じくFなのだが,Vは何?
信和商事(H14.11廃業)に来ていたアメリカ人の客によれば,軍用品の品番だと言っていたのだが…。
人づてに大谷商店のオヤジに訊いてもらったら,非フランクドライブ製品の記号では?との解釈。
そうなると,持っているスピンナやエクステンションバーは何故V品番なんだろう?うーむ。
謎は深まるばかりだ。こうなったらSnap-onの本社に訊くしかないのか。その前に語学力を…(W


と思っていたら,なんと!点接触のSW251(1951年製)が信和商事の倉庫から出てきた!
現行でこのサイズは無いが,SW品番は現行でも存在。左がSW251で右がSV251。共に25/32inで同サイズ品。
こうなるとV品番は非フランクドライブ品という説は覆された。やはり,V品番は軍用品なんだろうか?



一番右の物はロゴが「Snap /on」という1940年代の製品(イヤーマークはE)。これを除き,他は
1950年代頃の製品。この年代Snap-onは現在のコーケンに酷似。一部分が梨地で点接触!である。
ちなみに,V品番のSnap-onは全て製造年を示すイヤーマークは刻印されていない。
しかし,こんな物が新品(デッドストック)で在庫していた信和商事って…!



V品番ラチェットも,本来ならばイヤーマークがあるべき所(切り替えレバーのONとOFFの間)に刻印は無い。


板ラチェットにおけるイヤーマークの謎。(2010037日add)
最近,ギヤレンチ系の工具に押され,存続の危機?もある板ラチェットレンチ。半年くらい前に始めたブログで旧ロゴに
関する記事を書いているのだが,手持ちの工具を改めて調べていると,意外な?事実が…。



1980年代Snap-onの板ラチェットRBMシリーズ。当然,イヤーマークが刻印されており,上から1982年,
その下2本は1985年製。一番下は1970年代製なのだが何故かイヤーマーク刻印は無い。ちなみに,
PAT.3273430は面接触であるフランクドライブのパテントだ。



こちらは旧ロゴ時代を含めた1980年代PROTOの板ラチェット11**シリーズ。この頃は未だフランクドライブの
パテントが切れていないので,すべて点接触ドライブである。当然Snap-on製ではないのでイヤーマークなど
付いている訳が無い…?。と思ってひっくり返してみると…???



何と!1982年と1984年のイヤーマークが付いている!!
ちなみに,刻印されているPAT.NO.2500835は板ラチェットのパテントである。
勿論,PROTOの板ラチェはSnap-onのOEMではない。何故PROTOの製品に
Snap-onのイヤーマークが???



これは自転車工具メーカーであるPARKTOOLのCCW-4。クランクボルト用の工具だ。
ボックス部が出っ張る特殊形状の板ラチェットなのだが,これの裏側も見てみると…???



何と!これにも1991年のイヤーマークが付いている!!
そして,これにもパテント.NO.2500835が。ということは,アメリカ製板ラチェットの製造元は全て同じなのか???

で,それを確かめるためにアメリカ製板ラチェットの一大OEM元と思われる
KASTAR製の板ラチェットを輸入してみた。





KASTARのオフセットタイプの板ラチェットROWMシリーズ。もう既にパテントの有効期限が切れている
ので.PAT.2500835の刻印は無い。その代わり?上の写真にもあるPROTOの1984年製オフセット
板ラチェットではPAT.PENDであったオフセットに関するパテントナンバー47488754819521の表記
が裏側にされている。このパテントの所有者はA & E Manufacturing Company。発明者はA&E
創始者の息子であるJohn W. Lang。そして,もう一度PAT.2500835の発明者の名前を確認すると,こちらも
John W. Langだった。結局,板ラチェのパテントを持っていたのはKASTARそのものだったのだ。だから,
PAT.2500835が切れるまでのアメリカ製板ラチェはすべてKASTAR製であると言っても過言ではない?と
思われる…。で,その裏側だが…?



やっぱり,推測どおり(笑。
2007年と2008年のイヤーマーク入り。やはり,各社の板ラチェットは昔からKASTAR製だったのだ!。
と,ふとA&E のヒストリーページを見てみたら何のことはない,1932年以降スナップオンを始めとして,
シアーズ(クラフツマン),マック,マトコなどに供給しているとメーカーが公言しているのだった!

しかし,このA&E はスナップオンの系列会社ではない。著作権があると思われるスナップオンの
イヤーマーク(デートコード)が使用できるのは何故なんだろう?それも,今に始まったことでは
なく,相当昔から使っているのだ。ただ,創始者がスナップオンの技術者だったことからも何らかの
許可を受けているとも推測出来るが…。嗚呼,また追求しなければならない?謎が増えてしまった…!。

注:KASTARは2012年からA&E,Hi-Tec,などのブランドを含めて,
創始者一族の名前である「LANG」にブランドを統一しています。





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